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ミューザ川崎シンフォニーホール
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『祝祭のオスティナート』 未来へ続いていくよう願いを込めて 大木麻理インタビュー(前編)

ミューザ川崎シンフォニーホールの音楽ホールは、改修工事のため2019年1月15日~6月30日の間休館します。それに伴い、休館直前&直後のホールを楽しめる特別コンサートが企画されています。メインプレゼンターを務めるのは、ミューザの新ホールオルガニストであり、国内外で“期待の星”と称される大木麻理さん。
コンサートの魅力はもちろん、オルガン解説から未来に向けた想いまでお伺いしました。

※このインタビューは「かわさきアートニュースvol.271」に掲載されたものです。

大木麻理(ミューザ川崎シンフォニーホール ホールオルガニスト)

大きなおもちゃを手に入れた感覚

――オルガンとの出会いは?
小学4年生の頃、地元・静岡にパイプオルガン付きのホールができるというので、 見学会に参加し、実際に楽器を触らせてもらったのが出会いでした。ピアノがあまり得意ではなかったこともあり、「これだったらやってもいいな」と生意気なことを言ったそうです(笑)。地方にはなかなか練習環境がありませんでしたので、小中学生の頃は東京までレッスンに通っていましたね。

ミューザのオルガンのメインコンソール。4段の手鍵盤の左右に71のストップ(音色を変える装置)がある。

――パイプオルガンの魅力は?
なんというか、大きなおもちゃみたいだなって。私はあまり落ち着きのない子どもだったので、手も足もいろんな鍵盤があるオルガンは、とにかく弾くたびにワクワクして いました。オルガンの大変さを知った今でも変わらない魅力は、やはり表現の幅が大きいこと。様々なストップ(音色を変えるボタン)を駆使して無限の音作りができるという点は、いつも好奇心をくすぐられます。

2017年2月18日「オルガンの未来へIII」

ミューザとのエピソード

――ミューザや川崎とのエピソードを教えてください。2016年には、ミューザ主催『オルガンの未来へ』シリーズ企画公募で、意欲的なプログラムが採用されたこともあったそうですね。
ミューザの楽器を初めて弾いたのは、 2015年に呼んでいただいたランチタイム &ナイトコンサートのときでした。2016年の企画は、大学の同級生の作曲家が作ってくれた曲を弾こうと思い応募したのですが、現代曲をメインに取り上げたプログラムでしたので、もう譜読み地獄で…今思うと一番辛かったコンサートですね(笑)。でも、そのとき楽器に向き合う時間をたくさんいただいたからこそ、この楽器と仲良くなれたのかなと思います。 その後、オーディションを経て、2018年4月にホール専属オルガニストに就任させていただきました。川崎は音楽を押し出す力がすごいですよね。市内の小学生をミューザに招待する「音楽鑑賞教室」など、音楽の裾野拡大に力を入れている、素晴らしいまちだと感じています。

オルガン内部には外からは想像もつかないほどたくさんのパイプが格納されている。
ミューザのパイプ総数は5248本。

ホールオルガニストの使命とは

――ホールオルガニストのお仕事を教えてください。
演奏はもちろん、楽器の弾き込みや普及活動なども行っています。特に弾き込みは重要な使命で、例えるなら看護師さん的な役割でしょうか。ホールが空いている時間を見計らっては、一つ一つのパイプを鳴ら してみたり、全ての鍵盤を弾いてみたり…。 すごく地味な作業ですが、オルガンと向き合い、常にいい状態であるように努め、異常があればお医者さん、つまりオルガンを直す方に伝えるということをしています。 また、ただでさえ客席から遠いところに ある楽器を憧れで終わらせないために、ミューザでは「子どもに重点を置いた短期・長期レッスン」や「オルガン見学会」などを計画的に実施しています。少子化や音大進学者の減少などによって“次の世代” の奏者が少なくなっているオルガン界としても、こうした取り組みは有り難いことです。 オルガンに親しみを持つ方が増え、いつかミューザ発祥のオルガニストが誕生することが、私の大きな夢です。

2018年7月に行った「わたしもぼくもオルガニスト」発表会

2018年5月5日「こどもの日オープンハウス」では照明の演出とともに親しみやすい曲を演奏

日本のオルガンの未来

――これからオルガニストとして目指すものは?
西洋で生まれたものを真似するだけの 時代は終わり、今度は日本からどう独自性を持ってオルガン音楽を発信できるか、模索する時代に入っています。西洋の場合、オルガンはどうしても教会や宗教との結びつきが強いですが、日本の場合は主に公共 ホールにあり、立派な舞台、客席、音響も備わっている。こうした環境を生かした総合芸術ができないかと考えています。今年は尺八や和太鼓とコラボするなど、私にとって挑戦の一年でした。日本人の魂を揺さぶるような和楽器の力をお借りして、これまでのオルガンの演奏会では経験したことがないような熱い反応が沸き起こったことは、本当に新鮮な出来事でした。これからも、オルガンを使って何か新しいことを「したい」ではなく「しなければいけない」と思っています。

(後編に続く)

公演情報
2019年 1月14日 (月) 16:00開演(15:30開場)
祝祭のオスティナート~4人のオルガニストが紡ぐ明日への響き~
出演:大木麻理、梅干野安未、石丸由佳、三原麻里
詳細はこちら

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