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ベートーヴェン:交響曲 第7番

「ベト7」影の立役者。あの旋律が生きるのはヴィオラのおかげ。

首席ヴィオラ奏者 武生直子
G11

ベートーヴェンの交響曲でのヴィオラは、内声の重要な役割を担っています。例えば、管楽器や第1ヴァイオリンの裏で、実は一緒に旋律を弾いています。あまり主張していませんが、ヴィオラも弾くことで聞こえ方がまったく異なり、旋律に深みが出るんです。それから、特に「ベト7」では第2ヴァイオリンとダッ・ダッ・ダッ・ダッと刻みの音型を弾くことが多いのですが、これで響きに厚みを作っています。上下の旋律だけではダメで、中間がないと響きは充実しないんですよ。そして、低音部の1パートとして、チェロやコントラバスと一緒に弾く役割もあります。そんなときはコントラバスの弓使いのように、体の重みを使って音を鳴らします。このようにヴィオラは、旋律を弾いたと思えば、低音部になったりして、響きを支えています。
クレッシェンドして頂点を築くには、メロディだけでは無理で、内声部が盛り上げ役なのです。例えば、ドラマ「のだめカンタービレ」のオープニング曲で有名になった第1楽章の旋律は軽快で、華やかですよね。実はこの中で、ヴィオラと第2ヴァイオリンは16分音符を弾いています。ほかの楽器は旋律と同じリズムで動いていますから、ヴィオラが波のように動くことで音楽を引き立てているんですよ。途中で登場する下降音型も聴きどころです。

第2楽章は私が大好きな楽章です。ヴィオラで始まる旋律は弾いていて気持ちいいですが、アーティキュレーションやアンサンブル面では難しいです。この旋律が広がって、第1ヴァイオリンに移ったところからヴィオラはチェロと一緒に動きます。これが裏のメロディとして曲を盛り立てています。
ダンスのような第3楽章のあと、第4楽章でヴィオラは16分音符でバリバリ弾いています。2拍目のスフォルツァンドは大変ですが、ヴィオラ弾きとしてはとても面白いところです。途中にある音型が難しいのですが、“受け渡し”の役割なので重要です。最後のヴィオラは、チェロ、コントラバスと一緒に「ミ-レ♯」の音を繰り返し弾いて終わりへ向かうのですけれど、これがとてもかっこいいんですよ。
ヴィオラは相手が生きて初めて自分が生きる楽器なのが面白いです。特に「ベト7」のヴィオラは名脇役。ベートーヴェンはヴィオラに大切な音型を語らせているので、ヴィオラに注目すると思わぬ発見があるかも。
(SPIRAL Vol.19より転載/取材:榊原律子)

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集第110回

2015. 9.27 (日) 14:00開演
指揮:パトリチア・ピツァラ
ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァ曲目メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」 作品26
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92

公演詳細はコチラ

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