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モーツァルトが描くドタバタ恋愛喜劇「コジ・ファン・トゥッテ」または「恋人たちの学校」

2016.12.04

From_Muza

モーツァルトの歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』は副題に『あるいは恋人たちの学校』というタイトルがついています。そう、これは試される恋人たちの物語なのです。

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登場するのは婚約中の二組のカップル。その女性どうしは姉妹、そして男性どうしも知り合いという仲。

フィオルディリージ(ソプラノ):ドラベッラの姉(妹)でグリエルモの恋人。
ドラベッラ(メゾソプラノ):フィオルディリージの妹(姉)でフェルランドの恋人。
フェルランド(テノール):士官
グリエルモ(バス):士官
ドン・アルフォンソ(バス):老哲学者。
デスピーナ(ソプラノ):姉妹の女中。
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みなさんは「永遠の愛」を信じますか?
婚約を控えた二人の若者と老哲学者がカフェで話しているところから物語は始まります。あなたを愛していると疑わない彼女も、状況によっては簡単に浮気をするのだ、と老哲学者ドン・アルフォンソが男二人をあおりますが、フェルランドもグリエルモもそんなはずはないと突っぱねます。若さゆえの純真さを見ていられないドン・アルフォンソは現代風に言うと彼らに「ドッキリ」を仕掛けるのです。

とんでもないドッキリ
ドン・アルフォンソの企みとは、恋人が不在で絶対に帰ってこない状況下で、女性たちを別の男性が誘惑するというもの。
「恋人がしばらく帰ってこない」というシチュエーションは、彼らが徴兵されたというウソで作りあげます。婚約間近なのに恋人が遠く離れてしまえば寂しさのどん底に突き落とされるのは当然。そこに優しい声をかけられたらもしかして・・・とはいえ、言い寄ってきた男たち(グリエルモ、フェルランド)の変装は正直イマイチで、すぐに女性がなびくような「イケメン」ではありません。はっきり言って何者かもよくわからない怪しい外国人。まじめなフィオルディリージは「あり得ない!」と断固拒否します。しかしドン・アルフォンソはおせっかいな女中デスピーナを味方につけ、「男どもだって戦場で何してるんだからわからないんだからお嬢さんたちも楽しめばいいのに」とそそのかします。

最後に信じるのは・・・愛?
入れ替わった恋人の友人とも知らず、死んだふりをされたりあの手この手で口説かれて最初はドラベッラが、そして真面目に愛を貫こうとしていたフィオルディリージまでが・・・ついには二人とも陥落してしまいます。しかも!結婚の約束までしてしまうのです。
結婚式の準備を行っていると、遠くから軍隊ラッパが聞こえます。そう、戦争に行っているはずの「本来の」恋人が帰ってきてしまうのです。女たちは罪を告白し、仕掛け人であるドン・アルフォンソがすべての種明かしをし、大団円となります。

ここまで読んでこられた方は、「ほんとに大団円?」と思われたのではないでしょうか。最後に試されるのは「それでも恋人を愛せるか」という究極の問いなのです。

******************
なんだか無茶苦茶な話だと思った方、無理もありません。
ダ・ポンテが書いたこの筋書きのおかげでずっと「低俗」のレッテルを貼られ、ベートーヴェンやワーグナーにも酷評され、20世紀後半になるまであまり上演されてこなかったのです。
しかしながら、近年では特にモーツァルトの音楽の素晴らしさ、美しさが高く評価されています。一見低俗な物語だからこそ、この音楽がなかったら現代で再評価を受けることはなかったでしょう(いくらでも下品にしようと思えばできそうな筋書きですしね・・・)。また生き方が多様になった現代だからこそ、ストーリーへの解釈が道徳的なことに縛られることなく、より人間的なさまざまな試みが可能になり、物語としての評価も高まってきました。

今回、ミューザで演奏される『コジ』は、舞台セットや衣装のない、「演奏会形式」で行われます。
指揮者のジョナサン・ノットさんは「吟遊詩人が語り掛けるような」この形式が好きだと語っています。聴く方がそれぞれにこの物語から「愛とは?」「信じるとは?」「結婚とは?」を考えていただけたらと思います。そして、美しいモーツァルトの音楽を一流の声楽陣と指揮者、オーケストラの演奏で心ゆくまで楽しんでください

それにしてもドン・アルフォンソはつくづく老獪な奴です。あまり知り合いにはほしくないタイプですよね笑

 

歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』(モーツァルト作曲・演奏会形式・日本語字幕付き)
2016. 12.9 (金) 18:30開演 ミューザ川崎シンフォニーホール
2016. 12.11(日) 15:00開演 東京芸術劇場

指揮、ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット(東京交響楽団音楽監督)
舞台監修、ドン・アルフォンソ:サー・トーマス・アレン
フィオルディリージ:ヴィクトリヤ・カミンスカイテ※
ドラベッラ:マイテ・ボーモン
デスピーナ:ヴァレンティナ・ファルカス
フェルランド:アレック・シュレイダー※
グリエルモ:マルクス・ウェルバ
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団
※当初予定の出演者から変更になりました

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