フランツ・シュミット(1874-1939)。近年ではオーケストラの演奏会で4曲の交響曲が演奏される機会もちらほら観られるようになってはきているが、一般的な知名度は決して高いとは言えないだろう。フランスでフロラン・シュミットが同時期に活躍していたことも混乱の一因を生んでいる。晩年にナチス政府に協力したのではないか、という噂も、これまで作品の演奏機会に恵まれなかった理由に挙げられよう(ユダヤ人の友人たちによる反証で、この疑惑は晴らされつつある)。
フランツ・シュミットが亡くなる直前、1935~37年に創り上げたオラトリオ『7つの封印の書』は、20世紀に作られた大規模作品として、近年その演奏機会が世界的に増えている。長大な楽曲、大規模なオーケストラと合唱、数多くの独奏者を必要とすることからも、特別な機会に採り上げられる作品として上演の質が高く保たれやすいこと、録音として残ることも多いことなど、初演から90年近くを経て、その作品の真価がようやく多くのひとに知られるようになってきた。第二次世界大戦へと至る不気味な世相の中で作られた作品でもあり、先行き不透明な現代においてより一層の注目を浴びる要因になっている。
若い頃のフランツ・シュミットはウィーン宮廷歌劇場管弦楽団のチェロ奏者として、マーラーの指揮のもとで数多くの管弦楽作品・オペラ作品に触れる機会があった。さらにピアニストや教師など多角的な活躍を続けており、その並外れた才能と努力が、最晩年の傑作『7つの封印の書』で結実した。
新約聖書の中でも異質な内容のため、それまでに大規模に付曲される機会の少なかった「ヨハネの黙示録」を題材とする全3部の長大な作品。ヨハネが受難曲の福音史家よろしくその世界をものがたり、静謐ななかにも力強い音楽、オルガンの間奏などが独特の世界観をかたちづくる。冒頭のモティーフが冒頭の7小節で7回繰り返され、この世界において「7」が特別な数字であることが印象づけられる。
宗教性を感じさせるグレゴリオ聖歌やオルガンの使用、20世紀作品を演奏し続けたシュミットが血肉としたモダンな和声進行やオーケストレーション、オペラ的な効果を生むドラマ性豊かな音楽運びなどが、シュミット独自の個性のもとでたくみにまとめられ、唯一無二の説得力を生んだ傑作オラトリオ。いま、東京交響楽団と新しい音楽監督ロレンツォ・ヴィオッティ、すぐれた独奏者と合唱によって、いよいよその真価を顕わにする。