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ミューザ川崎シンフォニーホール
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【サマーミューザ特別連載】指揮者に聞く、10の質問!〔出口大地さん〕

日本音楽界の新時代を彩る指揮者が集結する今年のサマーミューザ。
そんな指揮者の皆さんに、10の質問へご回答いただきました!

第4回目は 東京フィルハーモニー交響楽団公演を指揮する出口大地(でぐちだいち)さん!

元々弁護士になりたかったという、異色の経歴の出口さん。お話を伺いました!

指揮棒を顎下に縦に添え、こちらを見つめる出口だいちさんの写真。
©hiro.pberg berlin

1)指揮者になろうと思ったきっかけはなんですか?

子どもの頃からピアノを習い、学生時代は部活動でホルンを吹いていましたが、音楽家になるなんてこれっぽっちも思っていませんでした。大学は弁護士になりたくて法学部に進学したものの、争いごとが苦手だと気付き早々に断念。その後は就職活動もしましたが、普通の社会人生活には全く向いてないと悟ります。そんな中、吹奏楽団でたまたま指揮を任される機会がありました。

自分の頑張りひとつで奏者もお客さんも笑顔になってくれる。「こんなにたくさんの人を幸せにできる仕事があるなんて!」と感動し一念発起、音楽の世界へ飛び込むことに。指揮者、音楽家としては非常に遅いスタートだと思います。

部活動の仲間8名と楽器を持って撮影した集合写真。左端が出口さん。
ホルン時代
岩のてっぺんでしゃがみ、空を見上げる出口さん。
弁護士を目指していた頃

2)指揮者でなければ何の仕事をしていたと思いますか?

指揮者でなければ猫になりたいです。


3)オフの⽇のリフレッシュ⽅法、過ごし⽅を教えてください。

飲む、整う、寝る。
一日中サウナ施設に入り浸り、コワーキングスペースで譜読み→サウナ→昼寝→譜読み…の繰り返し。
あとは友人らと、しこたま飲んでは反省しています。

ワイングラスを両手に持ち、浜辺に立って笑顔でこちらを向く出口さん。

4)作品に取り組むとき、一番最初にすること、大切にしていることはなんですか?

最初にすることは、楽譜の手配です。ひねくれた答えに聞こえるかもしれませんが、実はこれ、意外と大事な作業なんです。というのも、ひとつの作品でも複数の出版社から異なる内容の版が出ていることが多く、まずはそれらを見比べて、どの版を使うかを決めなくてはなりません。初めて取り組む作品だと、この選定作業だけでなかなか手こずることも。でもやっぱりひねくれた答えですね。

大切にしていることは、常に音楽や作品に対して誠実であることです。具体的には、音楽を自己表現のために利用するのではなく、その曲自体が持っている魅力や価値を自分なりに最大限伝えること。そのために、楽譜に書かれた情報を丁寧に読み取り、楽曲分析や資料研究にも時間をかけて取り組み、最終的には「これなら作曲家本人に聴かれても恥ずかしくない」と思える演奏を目指しています。……道のりはなかなか遠いですが。

5)「サマーミューザ」はどんな⾳楽祭だと感じますか?

日本の名だたるオーケストラが一堂に会してガチンコ勝負をする、暑い熱い夏の祭典!

お客様にとっては色んなオーケストラを聴き比べられる良い機会ですし、逆に演奏者側からするとプレッシャーも感じる、やりがいのある舞台です。あといつもイラストがかわいい。

6)今回演奏する曲のここは絶対聴いて!という「推し」ポイントを教えてください!

ベートーヴェンの交響曲第7番は、指揮科の学年末試験で先生にコテンパンに怒られたトラウマ曲ですが(笑)、今回はそのトラウマを払拭できるよう頑張ります!

ちゃんと真面目な話もしますと、この作品は緩徐楽章が一つもない風変わりな交響曲です(一番遅い2楽章でもAllegretto)。それぞれの楽章に固有のリズムパターンがあり、その執拗な反復によって緊張や興奮を引き出す作曲技法は、現代のロックやクラブミュージックにも通じています。是非そのリズムパターンを耳で追い続けてみてください。気づけばトランス状態に陥ることができるかもしれません。

ワーグナーはベートーヴェンの7番を「舞踏の神化」と表現しましたが、農民の踊りから葬送的な舞、そして神々の饗宴まで、それぞれの楽章が持つ様々なキャラクターのダンス、そのグルーヴに身を任せてみてはいかがでしょうか。

7)今回共演するオーケストラ&ソリストの印象やエピソードがあれば教えてください!

東京フィルは、日本デビューでご一緒したときからずっと私を見守ってくださっている、大切なオーケストラです。自分にとっては、まるで音楽の世界での“親”のような存在で、心から信頼を寄せています。

こう見えて(?)実はけっこうシャイで人見知りなのですが、東京フィルの現場に行くと、皆さんが親しく声をかけてくださるので、いつも安心して、のびのびと音楽に集中させてもらっています。豊富なオペラ経験に裏打ちされた柔軟さ、そして音楽への愛と情熱にあふれるエネルギッシュな演奏には、毎回本当に心を打たれます。

指揮棒を高く構え、険しい表情でオーケストラを見る出口さん。右手は大きく開いて力がみなぎっている。
2023年サマーミューザ初登場時様子。この公演でも東京フィルハーモニー交響楽団と共演。好評を博した。©平舘平

同郷の大阪府豊中市出身でもある前田妃奈さんの印象と言えば、やはりカエルさんでしょうか……。いつも笑顔とカエルさんが溢れている方です。何を言っているのかわからない方は是非彼女のSNSを覗いてみてください。ヴィエニャフスキは今回初めて取り組むのですが、彼女はこの作品を得意中の得意としていて、共演をとても楽しみにしています!

花柄のドレスを着て
ヴァイオリンを斜めに持ち、こちらに向かってほほ笑む前田さん。
2022年第16回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで優勝を果たした前田妃奈さん。
今回演奏するヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲は、優勝以来の披露となる。©平舘平

8)拠点であるベルリンでの⽣活で、面白かった・驚いたなど、印象深いエピソードを教えてください!

ベルリンでは雨が降ると、カッパの代わりに全身にゴミ袋を被ったゴミ袋人間が現れます。

9)ミューザ川崎シンフォニーホールに近年度々出演いただくなかで感じたホールの印象や、今回のミューザでの演奏でこだわりたいと思っていることなどを教えてください!

 ヨーロッパで出会う音楽家と日本のホールの話になると、必ずと言っていいほど名前が挙がるのがミューザです。ステージ上での時差がそこまで大きくなく(とても大事!)、お互いの音がしっかり聴こえて、バランスも比較的取りやすい。客席で聴いているだけでは意外と気づきにくいのですが、ステージ上の音響が演奏しやすいかどうかというのは、いい演奏をお届けする上で特に重要な点だと思います。それでいて響きをクリアなまま、よりリッチになるよう助けてくれる。その音響の素晴らしさはお世辞抜きに世界トップレベルだと思います。

個人的には学生時代に通い詰めたベルリンのフィルハーモニーにどこか似ていて、親近感も感じています。

10)お客様へのメッセージをお願いします!

前田妃奈さんのヴィエニャフスキ、そして東京フィルの皆様とのベートーヴェン。真夏のミューザをさらに熱く盛り上げる演奏会になると思いますので、是非お越しください!

東京フィルハーモニー交響楽団

東京フィルハーモニー交響楽団。ほとばしるヴィエニャフスキ、駆け抜けるベト7。8月6日水曜。15時開演、14時20分からプレトーク。指揮、出口だいち、ヴァイオリン、前田ひな。詳細ページへリンクします。

公演詳細はこちら

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