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【Interview】リオ・クオクマン(指揮、3/25名曲全集)

2023.02.14

From_Muza / インタビュー

R.シュトラウスとラヴェル 二人の管弦楽法の名人による
オーケストラの多彩な音色を楽しんで

――リオ・クオクマン(指揮)
Lio Kuikman
マカオ出身のリオ・クオクマンは、ジュリアード音楽院、カーティス音楽院、ニューイングランド音楽院などで学び、2014年、スヴェトラーノフ国際指揮者コンクールで最高位に入賞して国際的に注目される。ネゼ=セガンに認められ、フィラデルフィア管弦楽団のアシスタント・コンダクターを2シーズン務めたのち、現在は香港フィルのレジデント・コンダクターを務めている。日本でも、既にNHK交響楽団、東京都交響楽団、京都市交響楽団などに客演。3月の名曲全集で東京交響楽団と初共演し、ミューザ川崎シンフォニーホールにデビューする。
(取材・文:山田治生)

――日本に何度もいらっしゃっていますね。

昨年11月に京都市交響楽団を指揮して、コロナ禍後、3年ぶりに日本を訪れました。最初に日本に来たのは、高校生の頃、観光目的でした。日本デビューは2016年のラ・フォル・ジュルネTOKYO。シンフォニア・ヴィルソヴィアとの共演でした。それ以来、1年に2,3度、日本に来るようになりました。

――ラ・フォル・ジュルネでの指揮が印象に残っています。

すごくたくさんの聴衆が集まる素晴らしい音楽祭ですね。

――リオさんが指揮者になろうと思ったきっかけは?

母が音楽が大好きで、私が2、3歳の頃から、家ではベートーヴェンやチャイコフスキーの交響曲が入ったカセットテープがあって、それがずっとかかっていました。そして4歳のとき、母がマカオ管弦楽団のコンサートに連れて行ってくれたのですが、箸を持っている人(=指揮者)が出てきたのにびっくりして、その箸で大勢の音楽家たちをコントロールしているのに驚いたことをよく覚えています。そして「僕もあの箸を持っている人になりたい」と母に言いました。曲はブラームスの交響曲第2番でした。

4、5歳の頃からピアノのレッスンを受けるようになりました。マカオと香港の音楽院、ジュリアード音楽院では、ピアノを専攻しました。指揮者になるのは単なる夢でした。ジュリアード音楽院の修士課程を終えるときに、指揮者になる決心をし、母に電話をして「僕が指揮者になりたいと言ったのを覚えている?」とききました。そして、カーティス音楽院の指揮科のオーディションを受けました。

――そのあと、フィラデルフィア管弦楽団のアシスタント・コンダクターになられたのですね。

2014年に、音楽監督のヤニック・ネゼ=セガンさんに採用されました。フィラデルフィア管では、フルタイムのアシスタントで、すべてのリハーサルに出席し、何かが起こったときには代わりにリハーサルや本番を振ったり、教育コンサートを指揮したりしました。2016年にフィラデルフィア管弦楽団の日本ツアーでは、ミューザ川崎シンフォニーホールへも行きました。アシスタントとして行っていたので、本番も聴きました(2016年6月3日、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」ほか)。ミューザは素敵で、大好きなホールです。

――今は香港フィルのレジデント・コンダクターを務めていますね。

香港フィルとは、指揮者として共演する前に、12年前からピアニストとして共演しています。コロナ禍で音楽監督のヤープ・ヴァン・ズヴェーデンがなかなか香港に来られなくなり、私が数週間指揮したことをきっかけに、レジデント・コンダクターになりました。

レジデント・コンダクターとして、コロナ禍でホールが閉まっているときに、地下鉄の駅でオーケストラと動画の撮影をしたこともありました。最近では、シーズン・オープニング・コンサートやシーズン・クロージング・コンサートを指揮したりもしています。


香港フィルと地下鉄MTRとのコラボレーション。リオ・クオクマン自身も登場!(2021年)

――3月の東響とのコンサートについて、選曲はどのようにしましたか?

私は「ばらの騎士」組曲が大好きで、それに合わせるものとして「ラ・ヴァルス」を選びました。「ばらの騎士」には、美しく歌われる旋律があり、エレガントというよりは攻撃的なワルツがあり、モーツァルトのようなシンプルさ、親密さがあります。「ラ・ヴァルス」はラヴェルがワルツを使って第一次世界大戦で感じたことを表現しています。

ドイツとフランスの二人の作曲家がウィーンのワルツがどういうものか、どういう将来があるのかを、異なる角度でとらえ、違うスタイル、違うアイディアで書いています。また、二人の巨人がオーケストラの色彩を使ってその時代をどう見ていたかを表現しているので、この2曲を並べて対比させるのは面白いと思います。

――「ばらの騎士」組曲を真っ先に選んだ理由は?

まず、私はオペラが大好きなのです。この15年間、1年に1,2回オペラを振っています。それから、カーティス音楽院で師事したオットー=ヴェルナー・ミューラー先生がR.シュトラウスの弟子で、シュトラウスと会ったときのことや彼の指揮など、いろいろ話してくださって、シュトラウスが大好きなのです。

――「ばらの騎士」組曲の聴きどころはどこですか?

私としては、とりわけ三重唱のあとの恋人たちの二重唱のシーンが大好きです。純粋で誠実で感動的です。
(編注:「ばらの騎士」の終幕を飾るハイライト、元帥夫人・オクタヴィアン・ゾフィーの三重唱から、元帥夫人が去ったあとの若い恋人たちの二重唱。組曲版にも登場します。)

――コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲についてはいかがですか?

コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲も私が提案しました。コルンゴルトはウィーン出身ですが、シェーンベルクたちと違って、調性を使って新たなロマン派の方向へ進みました。彼は映画音楽でも活躍しました。少しハリウッド・スタイルのマーラーのようです(笑)。このヴァイオリン協奏曲は、アルマ・マーラー(マーラーの妻)に捧げられていますね。金川真弓さんとは初めてですが、素晴らしいヴァイオリニストと聞いていますので、共演が楽しみです。

――最後にこの演奏会への抱負をきかせてください。

このコンサートで、愛と希望をみなさんと分かち合いたいですね。「ばらの騎士」は愛と希望を分かち合うというのがテーマのオペラです。
そして、R.シュトラウスとラヴェルという二人のベスト・オーケストレイター(管弦楽法の名人)によるオーケストラの多彩な音色を楽しんでください。

  *   *   *   *   *

■公演情報:名曲全集 第185回
2023年3月25日(土)14:00開演
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/calendar/detail.php?id=3031
指揮:リオ・クオクマン
ヴァイオリン:金川真弓

コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op. 35
R. シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲 op. 59, TrV 227
ラヴェル:ラ・ヴァルス

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