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ベートーヴェン:交響曲 第7番【東京交響楽団第2ヴァイオリン奏者:鈴木浩司】

推進力を担うのは、脈動する16分音符
これがなければベト7は成立しない!

福﨑茉莉子さんプロフィール写真
東京交響楽団第2ヴァイオリン奏者:鈴木浩司 © N.Ikegami/TSO

取材・文:榊原律子

ベートーヴェンの交響曲第7番、いわゆる“ベト7”がプログラムに入ると、まず思うのが「16分音符を弾くぞ!」です。第1楽章で第2ヴァイオリンの面白いポイントは「メロディを弾かない」こと。輝かしくメロディを演奏する第1ヴァイオリンを横目に、内声を担う第2ヴァイオリンとヴィオラは16分音符をエネルギッシュに弾いています。音楽の推進力を担っているのがこの16分音符で、これがなければ成立しない曲だと自負しています。16分音符が始まると「よっしゃ、来た~!」というかんじで楽しいですね。そのあとも、メロディに合いの手を入れるように16分音符で音階を下ったり、提示部のクライマックスに向けて盛り上げていったり。16分音符は縁の下の力持ちのような役割を果たしています。

展開部になると付点リズムが続きますが、このリズムが実は難しく、付点が甘くなって3連符に近づきがちになります。オーケストラ全体でリズムを形成していく難しさ、面白さを改めて感じられるところでもあります。

再現部での16分音符には「ミ」のオクターヴで動くところが出てきますが、この「ミ」、指揮者によっては開放弦で弾くよう求められます。開放弦の音質は硬すぎるためオーケストラでは避けるのが一般的なのですが、それをあえて使うように言われると嬉しいですね。開放弦を使っているかどうか、響きにも注目してみてください。

ベト7といえば、葬送行進曲風の第2楽章が有名です。第2ヴァイオリンは、ヴィオラのメロディを受け継いで登場します。自分がメロディでありつつも、同時に奏でられるヴィオラ、その後につなげる第1ヴァイオリン、またフレーズの合間のピアニッシモなどとの音量のバランスを考えなければいけないので、神経を研ぎ澄ましながら演奏しています。

ベト7は、16分音符のほかに、弦楽器各パートが順にフレーズを“受け渡す”ところも楽しいです。第3楽章でも“受け渡し”が登場します。繰り返しのところでは、音を伸ばして「次は何が来るんだろう?」と思わせた直後“受け渡し”のメロディに戻る、その唐突感がより楽しいです。

第4楽章は、第1楽章同様、内声が16分音符で脈動します。第3楽章の終わりになると「もうすぐ第4楽章がくる!」と喜びを感じるほど楽しいです(笑)。16分音符にはスラーのついた小節もありますが、指揮者によってはパートの半数にスラーなしで弾かせることも。指揮者がこだわる16分音符は、メロディでなくてもやはり聴かせどころなのです。

第4楽章にも“受け渡し”があります。付点リズムのフレーズでは、他パートは同じパートと受け渡しますが、第2ヴァイオリンだけは、第1ヴァイオリンから受け取り、ヴィオラ、チェロに渡すという具合に、間に入って受け渡しをするのがユニークです。そしてクライマックスへ向けて、第1・第2ヴァイオリンでこれでもかというぐらい掛け合いをして、最後は単純な音階の繰り返しで終わる、本当に面白い曲です。

1月の「名曲全集」でおおくりするベト7。お客様にはぜひ曲全体を楽しんでいただけたらと思います。そんななか第2ヴァイオリンが気になるようになったら……あなたはオーケストラ通かもしれません!

(ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「SPIRAL」vol.86より「名曲のツボVol.75」)

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第214回


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