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ミューザ川崎シンフォニーホール
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【公演レポート】ミューザ川崎×東京交響楽団「名曲全集」第112回

最近、いろいろな場所で高くそびえるクリスマス・ツリーを見かけます。
また、クリスマス・ソングも流れていて、世の中はすっかりクリスマス・モードに。
そして寒さも身にしてみて感じるこの季節。体調などにお変わりはありませんか?
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さて、先日11月23日に行われました、東京交響楽団音楽監督ジョナサン・ノット氏が指揮した【ミューザ川崎×東京交響楽団名曲全集第112回公演】についてレポートします。

この演奏会は、ノット氏が考えた「人生」がテーマのプログラムで、選曲もこのテーマに沿って行われました。

1曲目「ポエム・サンフォニック」は、開場時から、速度の異なるメトロノームが100台ヒクタクと鳴っている作品です。この曲を、どのように聴いたらよいのか迷われた方もいたのではないでしょうか?来場者の中には、メトロノームが100台あるかどうかを数えている方もいれば、速度設定が1台ずつ異なることを、メトロノームが置かれている舞台上まで見にいかれる方もいらっしゃいました。最後のメトロノームが鳴りやむまでに40分弱ほどの時間を要しました。

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私自身、前日のサントリーホールを聴きに行った体験をお伝えします。当初この曲を聴いている間、全く心が穏やかでなく、早く終わってほしいと感じました。しかし、メトロノームが次々と止まっていくうちに、だんだん寂しい気持ちになり、終わらないでほしいかも、という思いに変化しました。まさか自分自身の中で相対する気持ちがこれほど短い間に沸き起こるものとは想像できませんでした。 そして、このメトロノームの音を聴きながら、日常の中で矛盾する気持が起こっているがために行動を起こせていないことが多いのかもしれないということに気づいたのです。たとえば、手放したい、だけれど、手放したくない、運動したい、だけど運動したくない、などなど。今回、このリゲティの作品を聴いたことで、新たな気づきを得る機会となりました。

2曲目のバッハはもともと宗教歌曲集だったようですが、往年の指揮者ストコフスキーが管弦楽のために編曲した作品で、聴いていて安らかな気持ちになりました。メロディが非常に美しい作品です。

3曲目は、ノット氏のプログラムがよく考えられているなと思った作品で、2曲目バッハが「暗」とすると、ブルレスケは「明」の曲といえるかもしれません。ピアニストのエマニュエル・アックス氏のピアノのタッチの軽やかさと音の粒がパールようにきらきらしていました。

この演奏会の締めくくりは、ショスタコーヴィチの交響曲第15番。これは彼の最後の交響曲で、死ぬ4年前に書いたという作品。この頃、ひげをそることができないほど手足の麻痺がひどくなっており、心臓発作の再発も懸念され、大変な時期だったようです。そのような状況の中、体調が一時的に回復したときに交響曲第15番は書き上げられました。この作品では、彼の好きな作曲家だったロッシーニ作曲の「ウィリアム・テル」序曲ほか、ほかの作曲家の作品が引用されています。作品全体を通して、彼自身の過去の人生を振り返っているのかもしれません。最後は、打楽器のアンサンブルで静かに終わります。聴けば聴くほど、作品の世界に引き込まれ、はまっていく曲だと思います。

打楽器に始まり打楽器で終わるという、ノット氏の考えつくされた、ストーリー性のあるプログラムに感心したコンサートでした。

(事業課 ふ)

2015年11月23日「名曲全集」第112回

【曲目】

11月23日(月・祝)13:30から1曲目が開始。

リゲティ:ポエム・サンフォニック 100台のメトロノームのための

J.S.バッハ(ストコフスキー編):甘き死よ、来たれ

リヒャルト・シュトラウス:ブルレスケ (ピアノ:エマニュエル・アックス)

ショスタコーヴィチ:交響曲第15番

公演詳細

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