2004年7月1日に「音楽のまち・かわさき」のシンボルとしてオープンしたミューザ川崎シンフォニーホール。その優れた音響について、サイモン・ラトル、マリス・ヤンソンスなど世界的に活躍するマエストロにも絶賛されるなど、「世界屈指の音響」として、日本全国にある同規模のコンサートホールの中でも存在感を示していました。
年間約80本のコンサートを展開し、ホールとしてハード面だけではなく、ソフトの充実も武器として、順調に運営されていました。
そして、7年目を目前に控えた2011年3月11日―
東日本大震災により天井仕上げ材等の落下という被害を受け、ホールは2年間の休館を余儀なくされました。
誰しもが、公演中止の対応を考えるなか、「ハードがなくても、わたしたちにはソフトがある! 音楽のまち・かわさきの灯をともしつづけよう」と、「代替公演」の日々がスタートしました。
震災からわずか1ヶ月で代替公演を実施
余震が続き、ホールの被害状況確認と復旧の目処がなかなか立たない中、目前に迫っている公演の中止、払い戻しなどの対応に追われました。そのような状況の中、代替公演の可能な会場を調査。一旦キャンセルしていた団体、アーティストへの連絡など、絶望の底から見えた光に向かってスタッフ全員が動いていました。そして・・・震災からわずか1ヶ月あまりで最初の公演開催。公演の中止を最小限におさえ、代替公演を軌道に乗せることができました。
MUZAランチタイム&ナイトコンサート
【会場】ラゾーナ川崎プラザソル(収容数200名)
日 時:2011年4月19日(火)
出 演:東京交響楽団メンバーによる木管五重奏
<当日来場されたお客様の声(抜粋)>
- ミューザ川崎シンフォニーホールが素晴らしいホールで東京交響楽団がすばらしい楽団ということは知っていましたが、このような状況下で活動を続けてくださり、初めて参加して楽しむことができました。ありがとうございました。
- ご親戚を亡くされたり、ホールが使えなくなったり、演奏家の皆様もいろいろ大変な想いをされてきたことと思います。直接衣食住にかかわらないと肩身の狭い思いをしますが、音楽は「心のビタミン」です。音楽のあるところに希望はあります。未来はあります!どうぞご自分の仕事にほこりを持って、みんなを勇気づけてください。
2011年4月19日の公演記録写真
スタッフ一丸となって乗り切った代替公演
会場を替えても公演を続けられる喜びは何物にも替え難いものですが、代替公演ならではの問題が次々と発生しました。特に、震災後半年程度はチケットの払い戻しと同時に、会場変更に伴う新しいチケットの販売、震災以前に販売していた指定席券の振り替えなどの作業に追われました。また、ミューザの譜面台、椅子をはじめ、ピアノ、反射板などを運搬するというこれまでに経験したことのない作業も多く発生しました。
指定席からエリア内自由席に変更したため開場前に出来た長蛇の列
2tトラックをチャーターしての備品運搬
男性6人でようやく持ち上がる
100kg以上の反射板
オーケストラが乗り切らないため、下手反射板をあげて
ミューザにある反射板を持ち込みました。
“Piano Triangle”公演のためにミューザの
ピアノ3台をクラブ・チッタに搬入
“Piano Triangle”公演記録写真
スタッフも驚いた!?
“フェスタ サマーミューザ KAWASAKI”の開催
首都圏9つのオーケストラが集結する川崎の夏の風物詩「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI」。この開催については、スタッフの中でさえ「開催中止」という文字が頭をよぎっていました。しかし、「フェスタこそ、実施すべき事業である」との川崎市の決断がくだされたのです。一旦キャンセルの連絡をしたオーケストラ全てに再度連絡を入れ、会場の確保、チラシの準備を行い6月13日に記者発表。 6月24日のチケット発売へとこぎつけました。開催まで1ヶ月というミューザ史上最短のチケット販売期間で不安のあるなか、オーケストラ14公演、関連イベントを含め、1万人を越えるお客様にご来場いただきました。2年目の2012年はオーケストラ13公演と公演数は減ったものの、2011年を約4,000人も上回る結果となりました。ミューザとは立地も設備も異なる会場での開催で、多くの不安を抱えながら初日を迎えましたが、温かい応援のお声と共に、たくさんの方にご来場いただくことができました。
<当日来場されたお客様の声(抜粋)>
- 今年はフェスタサマーミューザは開催されないと思っておりましたが、開催していただけて嬉しかったです。関係者の皆様のご尽力に感謝いたします。ありがとうございました。
- ガレリアコンサートは娘が0歳から一緒に聴けて嬉しかったです。お陰で娘はクラシック大好き。主人も忙しい仕事でなかなかコンサートに行けないところ、ナイトコンサートだけは何としても行ってリフレッシュしてるようです。
- 震災の影響で今年は中止かと諦めていましたが、無事開催され、会場が移動したにも関わらずスマートな運営でした。アウエーでは、それだけでも仕事が大変になりますが、目立ったトラブルもなく、いつもどおり快く演奏を楽しめたのは、スタッフの皆様の日常的なスキルの高さによるものと思いますし、加えて、どの会場でもたくさん来場したのはミューザの実績の現れだと思います。ご苦労様でした。
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2012 オープニングコンサート
(テアトロ・ジーリオ・ショウワ)
初めての会場となるお客様も多いため、
駅から会場までに案内スタッフを配置。
炎天下に早くから並ばれる
お客様に瞬間冷却材を配布。
お客様の笑顔が集まる“場”を目指して
ミューザ川崎シンフォニーホール「音楽工房」
ミューザ川崎シンフォニーホールに併設される、「音楽工房」は、震災の影響を受けることはありませんでした。少人数を対象とした公演が中心ではありましたが、例年より回数多く市民交流室でのコンサートを開催し、こどもから大人まで幅広い層のお客様にお集まりいただくことができました。多くの公演がほぼ満席に近く、ミューザ川崎シンフォニーホール本拠地での開催は、スタッフはもちろんお客様にとっても大切な事だったのだと気づくことができました。
こどもフェスタ(2011年度3日間、2012年度5日間)
毎年恒例となった、楽器体験や0歳からのミニコンサートを開催。例年同時開催だったフェスタ サマーミューザ KAWASAKIから抜け出して、2012年度は有料の公演やワークショップなど新しい企画で内容を充実させ、5日間実施しました。友の会限定企画(2012年度7回)
ホールが使えない中、引き続き支援してくださる会員の皆様への感謝を込めて、市民交流室にて無料招待のイベントを実施しました。ミューザ川崎シンフォニーホールのホールアドバイザーである秋山和慶をはじめとする豪華メンバーでの開催。50組100名のところ、枠を広げても抽選になってしまうほどの人気の企画となりました。音楽サロン(2011年度5回、2012年度5回)
例年は3回開催だったものを5回へ拡大。豪華プレゼンターと東京交響楽団のメンバーによるトークと演奏、休憩時にはお茶を楽しめる人気企画。2011年度「La Vie en Rose 人生に華やぎを」プレゼンター:各界の著名人(山本益博、西村朗、假屋崎省吾ほか)2012年度「音楽家たちの秘密」プレゼンター:東京交響楽団の指揮者・コンサートマスター(秋山和慶、グレブ・ニキティン、飯森範親ほか)その他の事業
- 企画展「宇野亜喜良とアールヌーボーの作家たち」(2011年度1回)
- 音のワークショップ(2011年度1回、2012年度1回)
- ポジティフオルガン講座(2011年度3回)
- 小川典子「黒猫コンサート」(2011年度1回) ほか
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こどもフェスタ
(こどものための音楽会) -
こどもフェスタ
(楽器体験) -
こどもフェスタ
(手作り竹楽器) -
こどもフェスタ
(0才からのミニコンサート) -
こどもフェスタ
(創作コーナー)
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友の会限定企画
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友の会限定企画
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音楽サロン
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黒猫コンサート
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企画展
「音楽のまち」の灯を絶やさぬよう届け続けた音楽
<市外でのコンサート>
所沢市民文化センターミューズ(埼玉県所沢市)藤原洋記念ホール(横浜市・日吉)
東京文化会館(東京都・上野)
東京芸術劇場(東京都・池袋)
温かいメッセージのほか、世界的な音楽祭「ザルツブルク音楽祭」をはじめ多くの団体、
アーティスト、お客様などから復興に向けて、ご支援をいただきました。
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