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オルガンの可能性を引き出すために/松居直美インタビュー

2018.12.12From_Muza


パイプオルガン クリスマス・コンサート2018~朗読劇でハートウォーミングなひとときを

毎年お楽しみなミューザ川崎シンフォニーホールのクリスマス企画。
今年は「言葉」×「音楽」、「ミューザ川崎シンフォニーホール」×「SPAC(静岡県舞台芸術センター)」と、見逃せないコラボレーションが光る“クリスマス朗読劇”をお届けします。
企画者であるミューザホールアドバイザー・松居直美さんは、日本にオルガンの響きを広めたパイオニアのお一人です。コンサートについてはもちろん、日本のオルガンの歴史、今、そして未来についてお話を伺いました。

(かわさきアートニュースVol.270より転載)

松居直美(オルガニスト/ミューザ川崎シンフォニーホール ホールアドバイザー)

* * * * *

降り注いだ未知の音
―― オルガンに出会われたきっかけを教えてください。
クリスチャンの両親に連れられて、私も小さい頃から教会へ通っていました。中学生のとき、教会がパイプオルガンを導入し、初めてその音色を聴きました。礼拝堂の上のギャラリーに設置されたものですから、音が上から降ってきたんですね。日常にない音で強いインパクトがあり「あれを弾いてみたい!」と感激したのを覚えています。ピアノもやっていましたが、あまり好きじゃなくて(笑)もしその経験が無かったら、違う人生に進んでいたでしょう。たまたまその教会でオルガンのレッスンが行われていたのですぐに申し込み、高校卒業後は音楽大学のオルガン科へ進みました。

パイプオルガンブーム
―― 日本では、NHKホールとサントリーホールが、普及のきっかけになったそうですね。
NHKホールのパイプオルガン完成(1973年)も大きな出来事でしたが、大衆がさらにコンサートに押し寄せるようになったのはサントリーホール開館(1986年)以降です。バブルの時代、おしゃれなホールで音楽を聴き、近くのホテルでお食事をするという流れは、まさにクラシックブームを作りました。このブームを期に日本中の県庁所在地にパイプオルガン付きのコンサートホールが建てられ、パイプオルガンが一気に増えました。

一方で、オルガニストはまだ少なかった。私の学生時代は教会くらいにしか楽器がなかったので、弾き手は牧師のお嬢さんなどキリスト教関係者がほとんどでした。インターネットが普及していなかったことも要因の一つだと思います。パイプオルガンがどこにあるのか、ヨーロッパにはどんな先生がいるのかなど、情報を集めるのにとても苦労しましたからね。有難いことに、私はオルガンが増えた頃に留学から帰ってきましたので、たまたま需要と供給が合ったという感じでした。

ミューザ川崎シンフォニーホールのパイプオルガン全体像

ミューザの優れたパイプオルガン
――ミューザのパイプオルガンは、組み立て段階から松居さんに携わっていただきました。
ミューザのパイプオルガンは総合的にとても良い楽器です。まず、国際的な指揮者が口を揃えておっしゃるように空間自体のクオリティーが高い。また、空間が大きいので楽器も大きく、パイプの数すなわち音色の数も沢山あります。パイプオルガンはよく「一台でオーケストラ」と例えられますが、ミューザには小指の先ほどのパイプから、人が中に入れるほどのパイプまでありますので、ささやくような音から重厚な音からまで、表現の幅が非常に広い。さらに、世界的に定評のある「スイスの職人」が寸分狂わず作った楽器という点でも、信頼度と安定感が高いですね。

ひと味違う企画を創る
――これまでホールアドバイザーとして様々な企画をされていますが、新しいコンセプトや手間のかかった創意工夫がすばらしいですね。
アドバイザー企画は「通り一遍のコンサートとは違うことができたら」という想いでやっています。それを助けてくれるミューザ事業課の皆さんの「一緒に面白がる若々しさ」は、ミューザの大きな力だと思いますね。

昨年まで4回続けてきた『オルガンの未来へ』というシリーズは、いろいろな日本人作曲家にmade in japanのオルガンの新曲を作ってもらうのがコンセプトの一つでした。日本はもともとオルガンが無かった国なので、作曲家の皆さんにオルガンをもっと知って、レパートリーを作っていただきたくて。現代曲は「よく分からない」と思われがちですが、お客様に面白がっていただけたことは、とても印象的でしたし嬉しかったですね。

『オルガン講座』という市民交流室での企画は開館当時から続けていただいていますが、一からパイプオルガンを作るという設定で職人さんと対談を行ったこともあります。オルガンは、歴史的に教会という権威ある場にあったため、当時の社会や政治が色濃く反映されている。社会学的、建築学的、絵画的といった多様なアプローチができますので、そうした興味をお持ちのお客様も多かったですね。

ヨーロッパが日本の啓蒙法を学ぶ!?日本が秘める可能性
―― パイプオルガンのレパートリーは「宗教曲」のイメージが大きいので、「現代曲」と聞くと興味が湧きますね!
そう、皆さん恐らくその通りだと思うんです。ヨーロッパだとどうしても“教会の楽器”という枠がありますので、「こんなこともできる」という未知の可能性を引き出す土壌は、日本にこそあると思っています。

さらに、ここ数十年ヨーロッパでは、若者の教会離れが進んでいます。オルガンに親しむ機会が無くなったり、弾き手が減ったり、問題が出てきているんです。そこでいま、参考にされているのが日本です。日本は「パイプオルガンはこんな楽器です」と一生懸命啓蒙をしないと始まらなかった経緯がありますので、啓蒙の仕方を聞かれることが増えていますね。時代は大きく動いています。枠が崩れつつある今、日本のホールというニュートラルな空間にあるパイプオルガンは、大きな可能性を持っていると言えるでしょう。

言葉と音楽で彩るクリスマス
―― 今回のコンサートは、俳優2名、ソプラノ1名、パイプオルガン1名による朗読劇です。企画意図をお聞かせください。
私は演奏するときいつも「どうやって音楽に語らせよう」ということを考えています。「言葉」と「音楽」は、その起こりから深く関係し合っており、例えば日本の声明(しょうみょう)や西洋のグレゴリオ聖歌は、節回しをつけて歌い、語りますよね。それはただ読んでいるときよりも人の心に届く。言葉から音楽を、音楽から言葉を感じ取る、お客様にもそんな体験していただきたいと思い、双方がコラボレーションできる朗読劇にしました。

宮城聰(SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督)

ミューザ×SPACのコラボ 演劇界のマエストロ監修
―― コンサートを監修するSPAC-静岡県舞台芸術センターの芸術総監督・宮城聰(さとし)さんは、2018-2020東京芸術祭総合ディレクターなども務めていらっしゃる、日本を代表する演出家です。SPAC(スパック)と聞いたら演劇ファンもたまらないのではないでしょうか。
以前から宮城さんのなさっていることが斬新で面白いと思っており、今回お願いさせていただきました。古いものと現代的なものの融合はお得意でいらっしゃるので、「観て、聴いて、体験できる」新しい朗読劇になるはずです。

10月に絵本化された「もう一人の博士」(新教出版社)より/イラスト:おむらまりこ

聖書の外伝を現代演劇的に
―― 朗読劇『もう一人の博士』のあらすじは?
原作は、古くからアメリカなどでクリスマス劇として親しまれている名作です。ベツレヘムにイエスキリストが誕生するとき「3人の博士が東方から星を追いかけて、生まれたばかりのイエスさまに会いました」というのは聖書にもある有名なお話ですが、そこから派生した物語『もう一人の博士』は、4人目の博士を描いています。彼は33年も遅刻してしまい、キリストはすでに十字架に磔にされていたという劇的な結末を迎えるのですが、遅刻には切実な理由がありました…というのがあらすじです。今回のコンサートは、宮城さんたちが現代演劇的に構成・演出をしてくださいます。聖書の世界とはまた違う、我々にも届くような物語を、私自身とても楽しみにしています!

心温まるひとときを
―― 具体的な見どころやお客さんへのメッセージをお願いします。
物語の所々に音楽がリンクし、内容を色づけます。例えば『暁の星のいと美しきかな』という曲は、博士たちを導いた星にちなんで選びました。作曲家の松岡あさひさんには、今回のために新曲を作っていただきます。ソプラノの鈴木美紀子さんはとても透き通った美しい声の持ち主なので、ミューザで綺麗に響く歌も楽しみです。SPACの俳優さんによる朗読劇は、演技や動きもあります。そもそもミューザの空間はすり鉢状で面白いですよね、そこも上手く使った演出にご期待ください。博士たちは馬に乗って旅をするので、馬も、本物ではないですが登場するかもしれません、どうぞお楽しみに(笑)

ミューザのクリスマス・コンサートは、いわゆるクリスマスメドレーをやるようなコンサートではなく、ミューザならではの、ちょっとキラリとするようなハートウォーミングなものです。クリスマスですから、皆様にはそんな時間を過ごして、きっと寒いでしょうから温まって帰っていただけるといいなと思います。

オルガンの未来へ
―― 最後に、ご自身の今後についてお聞かせください。
勉強に終わりはないです。古い楽譜が発見されたり、最新技術で古いオルガンの仕組みが解明されたり。何より、この道の先にある景色を見るために、これからも歩み続けたいですね。

もちろん若い世代のサポートもしたいです。オルガンはアナログな楽器で、手入れをすれば何百年と長持ちしますが、弾く人、聴く人がいなければだめになってしまいます。次の世代へ引き継いでいくために、私の経験から少しでも力になれることを、ライフワークとして続けていきたいと思います。

◆公演情報
MUZAパイプオルガン クリスマス・コンサート2018
~言葉と音楽で彩るファンタジー「もう一人の博士」~

2018年 12月22日 (土) 14:00開演(13:30開場)
詳しくはこちら

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PROFILE 松居直美
国立音楽大学オルガン科、同大学院修了。西ドイツ国立フライブルク音楽大学演奏家コース卒業。第21回ブダペスト国際音楽コンクール等多くのコンクールで優勝。2001年文化庁海外特別派遣生としてオランダへ留学。リサイタル、国内外のオーケストラとの共演等、その活動は多岐に渡る。1986年CDデビュー後、ソニー・レコードやカメラータ・トウキョウ他より多数のCDをリリース。2013年「J.S.バッハ:ライプツィヒ・コラール集」で文化庁芸術祭レコード部門優秀賞。1993年より所沢市民文化センター、2004年よりミューザ川崎シンフォニーホールのアドバイザーとして、オルガンの企画、啓蒙活動にも積極的に取り組む。その功績が認められ、平成26年度下總皖一音楽賞(音楽文化貢献部門)受賞。現在、日本キリスト教団小金井教会オルガニスト。日本オルガニスト協会、日本オルガン研究会会員。聖徳大学音楽学部教授。

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