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モーツァルト:交響曲 第41番「ジュピター」

モーツァルト最後の交響曲にして最高傑作とも言われる「ジュピター」。
やはりこの曲の白眉は第4楽章でしょう! 「ドレファミ」で築かれる壮大なフーガは圧倒的で後世の作曲家にも大きな影響を与えたと言われています。
6月12日「名曲全集」を前に、東京交響楽団第2ヴァイオリンフォアシュピーラーの福留さんにお話を伺いました。

第4楽章の神がかり的な三重フーガ
「オーケストラのメンバーでよかった!」と演奏しながら幸せになる曲です

第2ヴァイオリン フォアシュピーラー 福留史紘

G11

 主に旋律を担当する第1ヴァイオリン(以下「ファースト」)に対し、第2ヴァイオリン(以下「セカンド」)は内声を担当しますが、さらに「ジュピター」ではモーツァルトらしい疾走感、推進力を担っています。それがよく表れているのが第4楽章の冒頭です。ここで演奏するのはヴァイオリンだけで、ファーストがジュピター音型「ドレファミ」を弾いている間、セカンドは8分音符を奏でます。この8分音符は曲のテンポと流れを決定づけるという、重要な役割を果たしています。
 そして、第4楽章の冒頭はセカンドとって一番の難所でもあります。楽譜上は単純に見えますが、1音ずつ違う弦で弾くことが多いです。移弦のテクニックは意外と難しく、弦を移るたび音がガタガタしてはいけないし、かといって音の粒がぼけてもダメ。それを速いテンポで、セカンド奏者全員で弾かなければいけないのですから、かなりのプレッシャーです。僕は東響で7年ほどファーストだったのですが、セカンドに移籍するまで、ここがこんなに難しいとは知りませんでした。目立ちすぎず、けれど存在感があり、和声の進行がはっきり分かるように弾く、という難所であると同時に、要所でもあります。音楽がどう進むかはセカンド次第とも言えるでしょう。
 難所のプレッシャーを除けば、「ジュピター」は「オーケストラのメンバーでよかった!」と思うほど演奏していて幸せになる作品です。第4楽章最後の三重フーガは見事で、本当に神がかっています。音が鳴るというより空間が広がっていく感覚で、決して大編成ではないのにスケール感が壮大。だから「ジュピター」という愛称がついているのでしょうね。改めてモーツァルトの天才ぶりを実感する作品です。
 セカンドは「内声」と呼ばれますが、これは単に「外声」に対する言葉ではなく「内なる声」だと思っています。オーケストラの中では音楽の方向性を主張していく大きな役割を担っており、その主張の結果として、セカンドがもたらす音色や和声の色彩の変化に気が付いてもらえると嬉しいです。心地よく聴こえる音楽の中で、ふと気付くとセカンドがいい仕事をしている。そのように感じていただけたら幸せです。
 モーツァルトの演奏には、作曲当時の演奏を念頭に置いたピリオド奏法と、いわゆる普通の演奏があります。ピリオド奏法ではヴィブラートは「なし」もしくは「控えめに」しますが、それだけではなく、弓を持つ右手が重要になります。ヴィブラートを控えた場合、何もしないと長い音は無表情になってしまうので、弓のスピードをコントロールして表現するのです。たとえば、最初は少し速い弓で発音し、そこからテンションを抜いていくといった風に。また、現代の弓ではなくバロック時代の弓をイメージして弾きます。
 リハーサルの際、指揮者が「今回はピリオド奏法で」と言うことはありません。何も言わなくても、テンポや棒の振り方から、指揮者のイメージする音は分かるんですよ。東響には、スダーン前音楽監督が取り入れたピリオド奏法がモーツァルト演奏の礎にあるので、指揮者の意図する音色にすぐ統一することができます。そこが東響のモーツァルト演奏での強みだと思います。
 6月の「名曲全集」を指揮するのは、バッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督の鈴木雅明さんです。鈴木さんが東響を指揮するのは今回が初めて。今からとても楽しみです。(「スパイラル」Vol.48より転載/取材:榊原律子)

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集第118回 期待に胸高まる、親子鷹の共演

2016. 6.12 (日) 14:00開演
【出演】
指揮:鈴木雅明
オルガン:鈴木優人
【曲目】
モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
サン=サーンス:交響曲 第3番 ハ短調 作品78「オルガン付き」
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