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プログラム・ノート―青木早希(オルガン)

2020.02.12From_Muza


2月22日「言葉は音楽 音楽は言葉」公演にむけて、オルガニスト青木早希さんによる曲目解説をWeb先行公開しました。公演前にぜひご一読ください。

PROGRAM NOTE
文:青木早希(オルガン)

【第1幕 : 時代(とき)を超えたディアローグ】

〜バロック《歪んだ真珠》の弾き比べ〜
真珠や宝石のいびつな形を指すポルトガル語“barroco”に由来し、奇妙でグロテスクなものの例えとして18世紀に用いられた言葉とされる“バロック”。歪みのない純白な真珠に例える調和のとれたルネサンスから、新しい時代“バロック”への大きな変動、その革新者の頂点とも言える巨匠J.S.バッハそしてL.マルシャン、当時の聴衆にとっては目を見開くような斬新な彼らの音楽を、「歪んだ真珠」と冷たい目線で眺める文化人もたくさんいたに違いありません。そんなバロックの黄金期を生きた二人の作曲家がある日出会い、弾き比べをする計画もあったという事実を皆さまご存知でしたか?太陽王ルイ14世のもとで活躍したヴェルサイユ宮殿のオルガニスト、マルシャンは気ままな人でもあったようで、追い出されるようにしてフランスを離れ、ドイツ各地を旅することになったようです。途中、立ち寄ったドレスデンでバッハとの腕比べが企画されましたが、当日マルシャンは姿を見せず、その後パリに戻ったというエピソードは有名です。当時から大きな賞賛を得たと言われているグラン・ディアローグはタイトルにあるよう、様々な音色が、鍵盤交替などを通してディアローグ(対話)しながら展開していきます。楽曲は4つのセクションに分かれており、いかにもルイ14世の宮廷入場を思わせる冒頭部、二人の歌手が歌うデュオ、和声豊かな中間部、そして華やかなフーガで幕を閉じます。バッハは、グリニーやダングルベールなどフランスの作曲家の作品を写譜し、自身の作風にフランス の香りを取り入れましたが、中でも有名な作品がこのピエス・ドルグ。仏語で書かれたタイトル「Pièce d’orgue(オルガン曲)」は、それぞれ性格の異なった3つのセクションに分かれます。第1セクションは“très vitement(非常に速く)”と仏語で書かれ、快活な弦楽器を想起させるアルペジオが続き、“gravement(重々しく)”と記された、フランス古典様式グラン・プランジュへのオマージュとも言えるような和声豊かな中間部を経て、“lentement(ゆっくりと)”とある最終セクションへと移ります。ここでもまた弦楽器を思わせるアルペジオが流れるように続き、最後は穏やかな完全終止で幕を閉じます。今は亡きフランスの偉大なオルガニストM.シャピュイは、この3つのセクションからなる作品を、あるひとりの生涯に例えています。第1セクション : Jeunesse「青年期」、第2セクション: maturité 「成人期」、第3セクション: vieillesse 「晩年」。そして、穏やかな光に満ちた終結を人生の終止符とはせずvie éternelle 「永遠の命」と呼んでいます。

〜仮面たちの時空飛行ダンス〜
次にお聴きいただくのは、ルネサンス期を生きた作曲家たちと20世紀の作曲家B.バルトークの舞踏曲です。ここでは時代を飛躍しながらそれぞれの作曲家たちが対話します。民族音楽研究家でもあったバルトークは、1881年ハンガリーに生まれます。もともとピアノのために書かれた「ソナチネ」そして「ルーマニア民俗舞曲」は、ともにトランシルヴァニアの民族旋律に基づいており、どこか懐かしいような素朴な旋律が、耳に心地よいバルトーク独特の和声にせて、綴られています。3世紀以上の時代を超えながらも、このバルトークと自然に掛け合うルネサンス期の作曲家たち。イギリスのバード、スペインのカベソンそして同時代を生きた名の知れない作曲家の作品にもまた、バルトークの作品に香る素朴な、しかし力のある音楽を見出すことができるように思えます。作者不詳の「ラミレの上で」は、左手のバス声部にラミレの三つの音が限りなく繰り返されるオスティナートバスにのせて、右手の旋律がどこか悲しく懐かしく響きます。バードの活き活きとしたガイヤルド、そしてカベソンの気品溢れるパヴァーヌはいずれもルネサンス期に好んで用いられた舞踏曲ですが、これらの作品が3世紀以上もの時間(とき)を経てバルトークの舞曲と出会うとき……。国も時代も異なった作曲家たちのダンスが、マイムの仮面と共に舞い、彩り、そして対話します。

〜空を舞う風、鳥、そして聖霊〜
ここでもまた時空を超えた作曲家たちのディアローグを楽しんでいただきます。風、鳥、聖霊……どれも空中に漂う神秘な存在ですが、そのあり方はまた大きく異なります。そしてそれらをどう表現するかも、それぞれの作曲家、国や時代によって様々です。20世紀を代表する大作曲家O.メシアンは、ピアニスト、オルガニストであると同時に、偉大な神学者、鳥類学者でもありました。世界中の鳥の声を採集し、その情熱を音に託した代表的な作品の一つである「鳥たちと泉」では、ナイチンゲール、かっこうなど様々な鳥の歌声が、穏やかな泉の流れと交差しながら、空から降り注ぎます。時代は遡り、ドイツバロックの時代を生きた作曲家、オルガニストであったJ.K.ケルルもまた美しい鳥の歌声の虜であったのでしょうか。始終かっこうの鳴き声が各声部に現れるカプリッチョは、おそらくG.フレスコバルディを手本とした作品で、チェンバロもしくはオルガンのために書かれた非常に技巧的なユニークな名曲です。そして第1幕を締めくくるのは「聖霊」をテーマにした作品たちです。ともに熱心なキリスト教徒であったメシアンそしてバッハ。キリスト教の核心でもある三位一体「父、子、聖霊」の教えにある「聖霊」は、しばし白い鳩に例えられることもあるように、空中に飛び交う力強い存在です。メシアンの「聖霊の風」では吹きすさぶ風にのって荒々しく舞い降りる聖霊の姿が、そしてバッハの「来たれ、創り主なる聖霊の神よ」では光に満ちたミクソリディア旋法の中で、グレゴリオ聖歌「ヴェニ・クレアトール・スピリトゥス」の旋律が、ソプラノ声部にその後ペダル声部にて壮大に響き、聖霊の息吹きを力強く讃えています。

【第2幕 : 言葉に秘める音と動き】

マイム、オルガン。共に「言葉」を使わず「言葉」を表現する芸術です。現代の作曲家に焦点をあてた第2幕ですが、それぞれの作品には明確なタイトルがあり、作曲家たちは皆、独自の思いやメッセージを曲に託します。第2幕の幕開けはJ.アランの「3つの舞曲」より「喜悦」、「愁傷」そして「闘争」です。29歳という若さで惜しくも戦死してしまったその短すぎる生涯最後の作品でもあり、まさにアランの集大成とも言える大作です。妹にあたるオルガニスト、マリー=クレール・アランは、この作品について「人生の様々な局面を描いた詩曲である」と説明しています。「喜悦」は喜びに弾む幼年期、「愁傷」は苦悩を覚える成人期、そして「闘争」は、喜びと苦しみの二つのテーマが混じり合い、苦しみに打ち勝とうと葛藤するある一人の人生が描かれていると語っています。

次に演奏する柿沼唯の「蓮花」は、皆さまもよくご存知のわらべ唄「ひらいたひらいた」の旋律をもとにした作品です。もともとミーントーン調律のオルガンのために書かれた作品でしたが、現代の楽器ではもちろん、バロック、そしてルネサンスの楽器にまで遡って演奏することが可能な、時代を超えた美しく繊細な作品です。そしてプログラム最後を締めくくるのは、T.エスケシュ作曲の「オルガンのための詩曲」。もともと1998年に作曲された混声12部とオルガンのための3つのモテットを、オルガンソロに書き換えたこの詩曲は、チュニジア生まれのフランスの詩人アラン・スイエッドの詩集「Le pays perdu(失われた故郷)」にある「誕生の水」、「仮面」、「希望へ」の3つの詩がもととなっています。第1曲「誕生の水」では、「誕生」という局面を誇張するかのように、グレゴリオ聖歌「Puer natus est nobis(幼子われらに生まれ)」が、不変的なしかし不均等なリズムの中で繰り返されます。中間部の短いトッカータ部分で、赤子の温かな産声とも言える叫びが聴こえたかと思うと、再び冒頭にある生誕の神秘を思わす静けさが、透き通る水の滴れと共に現れ幕を閉じます。第2曲「仮面」は、「死の眼差し」と題することもできたと作者が語るように、非常に鋭く劇的な作品です。激しい和音の群が、必然的なそれでいて不規則な沈黙(休符)に刻まれながら響き、それはまるでスイエッドの詩の音節音節の間隔を、鋭い刃物で切り裂きながら訴える嘆きのようでもあると作者は語ります。そして最終曲「希望へ」。避けることのできない「死」を前にして私たちの持つ唯一の力、「希望」。そしてそれは創造主(神)への嘆願であり、だからこそグレゴリオ聖歌「Kyrie eleison(主、憐れめよ)」を用いたのだと作者は語ります。マイムもオルガンも明確なセリフや歌詞のない寡黙な芸術。だからこそ、その数少ない言葉(タイトル)に秘められた可能性は無限に広がります。奏でる音色やそれに伴う呼吸、そして一つ一つの体の動きが、一音一音に秘められた言葉をどこまで表現できるか。言葉のない作品だからこそ生まれるこの限りない可能性は、それを表現しようとする私たちだけでなく、それを受け止める観客のみなさまにも広がっています。その無限の可能性、色鮮やかなイメージを、マイムそしてオルガンにのせて、みなさま自らの言葉で綴ってみてはいかがでしょうか。

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ホールアドバイザー松居直美企画「言葉は音楽 音楽は言葉」Ⅱ
パイプオルガンとパントマイムが紡ぐ物語

【日時】2020年 2月22日(土)14:00開演
【出演】オルガン:青木早希
    マイム:マンガノマシップ
【曲目】第1幕《時代を超えたディアローグ》
    ~バロック「歪んだ真珠」の弾き比べ~
    ルイ・マルシャン:グラン・ディアローグ 他
    ~仮面たちの時空飛行ダンス~
    バルトーク/イゾワール:ルーマニア民俗舞曲から 他
    ~空を舞う風、鳥、そして聖霊~
    メシアン:聖霊降誕祭のミサから 他

    第2幕《言葉に秘める音と動き》
    アラン:3つの舞曲から「喜悦」「愁傷」「闘争」
    柿沼唯:蓮花
    エスケシュ:オルガンのための詩曲から「誕生の水」「仮面」「希望へ」

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