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原田慶太楼からのメッセージ~激動の20世紀を生きた3人の作曲家 消えることのない音楽~

原田慶太楼さんプロフィール写真
原田慶太楼 © 37 Frames

20世紀のモダニズムを辿る旅

今回のフィナーレコンサートの選曲のテーマは、“20世紀のモダニズム”。取り上げるのは20世紀に活躍した3人の作曲家で、3人とも今年がアニバーサリーイヤーです(芥川は生誕100年、バルトークは没後80年、ニールセンは生誕160年)。3人ともクラシック音楽が大きく変化する20世紀において、伝統的なロマン派のスタイルから脱却し、現代音楽の発展に貢献しました。

時間軸で見てみると、ニールセンの交響曲第4番が第一次世界大戦中の1916年の作品、バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番が1938年の作品。翌1939年に第二次世界大戦が始まります。芥川也寸志の『八甲田山』は1977年なので戦後ですが、芥川は学生時代に軍楽隊に配属されており、3人とも戦争の時代を生きていました。

それぞれの作曲家の生まれた順番としては、ニールセン(1865 ~ 1931)、バルトーク(1881 ~1945)、芥川也寸志(1925 ~ 1989)になるのですが、今回のコンサートの演奏順は芥川、バルトーク、ニールセンと逆になっています。これはあえてこの順番にしました。現在から昔へとさかのぼることで、音楽的な関連性がより見えてくるのではないかと考えたのです。

芥川のオーケストレーションや旋律の美しさ、展開の仕方などに注目すると、少し世代が上のバルトークの音楽の激しさのなかにある美しさ、とくに民俗音楽をベースにしたメロディやハーモニーの美しさとつながる部分があります。この流れの元を辿っていくと、ニールセンが浮かび上がってくる。芥川は日本の伝統音楽の要素を取り入れ、バルトークはハンガリーの民謡からインスピレーションを得て、ニールセンの音楽はしばしばデンマークの民謡・民話の精神を喚起しました。こうやって見ると、20世紀音楽におけるモダニズムの一端はニールセンから始まっているとも言えます。

「絶対に破壊できないもの」

そして、今回の選曲ではもうひとつの大きなテーマがあります。それは「生命」「生きる力」ということです。今回バルトークのソリストとして登場する服部百音さんは、数年前に尺骨神経麻痺でお箸も持てない状態になり、さらにいろいろあってご体調を崩された時期がありましたが、見事復活して、さらに豊かな表現力を身につけて帰ってきた。彼女のパワーは誰にも止められない。まさにニールセンの第4番の副題『不滅』という言葉がぴったりだと思います。

服部百音さんプロフィール写真
服部百音 © YUJI HORI

英語では「Inextinguishable」と言いますが、この言葉に私が感じているニュアンスは、「絶対に破壊できないもの」です。ニールセンは第4番について「生命の根源的な意志」がテーマだと言い、また「音楽は生命であり、生命と同様に消えることのないものである」という言葉も残しています。音楽は絶対に消えることはない。今回服部百音さんはニールセンを演奏しませんが、百音さんが出演するこのコンサートで『不滅』を演奏するということは、私にとってとても大きな意味を持っています。

サマーミューザプログラムから(取材・文=編集部)

フェスタ サマーミューザ
KAWASAKI 2025
東京交響楽団 フィナーレコンサート
慶太楼が贈る、不滅の作曲家たち

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