メンデルスゾーン:交響曲 第4番「イタリア」【東京交響楽団オーボエ奏者:浦脇健太】
2026.01.08
爽やかな風が吹く、フレッシュな名曲
メンデルスゾーンはオーボエを特別扱い?

取材・文:榊原律子
メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」は爽やかな風が吹き抜けていくようなフレッシュな曲で、僕は大好きです。
「イタリア」のオーボエといえば第2楽章です。木管楽器と弦楽器のユニゾンで印象的に始まったあと、オーボエが短調ながら歌心あふれるメロディを奏でます。ここはオーボエの聴かせどころですが、演奏するのは1番オーボエのみ。僕が担当する2番オーボエは休みなので、素敵なソロを隣で聴けるのを毎回楽しみにしています(笑)。このメロディは、オーボエと共にファゴット、ヴィオラも演奏するのが面白いところで、オーボエのメロディに深みを出すためにファゴットとヴィオラが置かれているのだと思います。3つの音色が溶け合うと、とても味わい深い響きになります。さらにこのときチェロとコントラバスが8分音符で動きます。淡々と歩みを進める低弦の動きも聴きどころだと思います。
順序が逆になりましたが、第1楽章の話を。曲は木管楽器の軽やかな8分音符のリズムで始まり、そこからヴァイオリンの爽やかなメロディが出てきます。この出だしが僕はとても好きなのですが、実はオーボエは休みなので、周りがみんな演奏しているなか静かに座っています(苦笑)。この8分音符は、舌を使って息を区切る「タンギング」という奏法で演奏します。ただ、タンギングが得意なオーボエではなく、タンギングが苦手と言われるクラリネットに吹かせているのがメンデルスゾーンの不思議なところ。このあとオーボエはいろいろなメロディを吹くので、メンデルスゾーンにとってオーボエは「メロディの楽器」なのかもしれません。
第3楽章はメヌエット。明るく朗らかな雰囲気の曲です。中間部でホルンとファゴットが活躍しますが、この2つの楽器が混ざりあった温かな音色が僕は好きです。
第4楽章はサルタレッロというイタリアの速い舞曲で、短調の曲です。木管楽器はトリルを吹いたあと、弦楽器と一緒に3連符を吹きますが、第1楽章同様この3連符もなぜかオーボエだけ休みです。そのあと、フルート2人が吹くメロディが聴きどころ。速い3連符で進み、8分休符のわずかな間でブレスを取りますが、この呼吸の緊張感はなかなかなものなので、注目して聴くと面白いと思います。そして第4楽章の最後は、勢いそのままに短調のまま終わります。
「イタリア」のオーケストレーションは、例えば弦楽器がメロディで管楽器はハーモニーというように、今どの楽器群がどういう動きをしているか、目にも耳にも分かりやすいので、オーケストラの様子がより楽しめる曲だと思います。2番オーボエにとっての「イタリア」は、楽しく吹ける曲であり、さらに第2楽章の1番オーボエや第4楽章のフルートなど、各パートのいいところを特等席で聴ける最高の曲です!

交響曲第4番「イタリア」は1830年ローマで作曲開始。1833年ベルリンで完成。1833年ロンドンで初演。
今回の指揮者、川瀬賢太郎さんは爽やかな指揮をされる方なので「イタリア」にぴったり。大学時代、所属していたジュニア・オケでも指揮をしてくださったので、個人的にはプロになって共演できることを感慨深く思います。2月の「名曲全集」では、太陽が明るく輝く、爽やかな空気感を表現できるよう演奏したいと思っています。どうぞお楽しみに!
(ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「SPIRAL」vol.87より「名曲のツボVol.76」)

