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HOME  / ブログ / 「スパイラル」名曲のツボ / ブラームス:交響曲第4番ホ短調作品98

ブラームス:交響曲第4番ホ短調作品98

ブラームス最後の交響曲である第4番。哀切な響きが秋の深まる11月にぴったりの曲です。
東京交響楽団ヴィオラ奏者の大角さんに、この曲についてお話を伺いました。

フレーズの受け渡しは、アイ・コンタクトとほほ笑みで

東京交響楽団
ヴィオラ奏者 大角 彩
va_osumi

 ブラームスは交響曲第1番を約20年かけて作曲したあと、第2番、第3番を短期間で書き上げ、最後の第4番を作曲しました。第2・3番と比べると、第4番は内声(中音域のパート)の音の絡み方が特に緻密です。内声のヴィオラ・パートの鍵は3連符で、明るく伸びやかな3連符、くぐもった3連符、悲しさ、苦しさのある3連符、音楽の高まりを促す3連符など、それぞれの和声の違いを感じながら様々な表現をします。哀愁漂う第4番ですが、暗さのなかにも希望を見出す響きを心掛けて3連符を演奏しています。
 私の個人的な解釈ですが、第4番はブラームスが人生を振り返っているように聴こえてなりません。ブラームスはクララ・シューマンを愛していましたが、生涯を共にすることはありませんでした。第1楽章からは彼の感じる「孤独」が見えますし、ほかにも、ここはクララとの愛、ここは悲しみ……など考えながら弾くと、ブラームスは情感豊かな激動の人生を送ったのだろうと想像できます。

クララ・シューマン

クララ・シューマン

 ブラームスの作品は、ヴィオラにとって鳴らしやすい低音域が多く使われているので、余計な力を入れて弾かなくても音楽が自然に広がってくれます。そのなかで感じるのは、フレーズを次へつなげる難しさ。フレーズが切れると音楽が一瞬で崩れてしまうので、「次につなげる」思いが大切です。第2楽章にあるヴィオラのメロディはたった8小節ですが、最初から最後まで息を切らさないように弾いています。ちなみに、交響曲第4番でヴィオラが表立って活躍するところは、この箇所だけ。ですから全身全霊で弾きますが、そのぶん緊張感も並大抵ではありません(苦笑)。このメロディはヴィオラ内で上下2パートに分かれて演奏します。私は下(低い音)のパートの方が好きで、指揮者も下を鳴らすよう指示される方が多いです。下が豊かに鳴らなければ上の旋律が活きてこないので、かなり気合が入ります。
 交響曲第4番で私が一番好きな箇所は、この第2楽章のヴィオラのメロディと、第4楽章のトロンボーンのコラールです。コラールは本当に美しく、しかもトロンボーンと一緒に演奏するのはヴィオラとチェロだけ。コラールに色付けをするヴィオラは、とても幸せな役回りです。また、第2楽章の冒頭も好きです。ピツィカートの寂しさと切なさの中に希望もあって、胸にぐっと迫ります。
 ヴィオラは、第2ヴァイオリンやチェロとフレーズを受け渡しすることがとても多く、隣に座るチェロ・セクションとは演奏中にそのフレーズがくるとアイ・コンタクトをとることもしばしばあります。舞台上で目を合わせ、うなずき、ほほ笑み合うヴィオラとチェロに注目すると、内声のフレーズの動きが見えておもしろいと思いますよ。

(「スパイラル」vol.50(2016年10月1日号)より転載/取材:榊原律子)

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集第122回 郷愁漂う傑作集! 新時代を切り開く、女流音楽家たちによる

2016. 11.3 (木) 14:00開演
指揮:シモーネ・ヤング
チェロ:アリサ・ワイラースタイン

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104 B.191
ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 作品98
http://www.kawasaki-sym-hall.jp/calendar/detail.php?id=1693

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