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ドヴォルザーク:交響曲第8番

今回の「名曲のツボ」は、東京交響楽団チェロ奏者 樋口泰世さんのお話です。イマジネーションの扉を開くと、ワクワクするようなファンタジーの世界が広がっていました。演奏者ならではの「ツボ」も興味深いです。コンサートでもぜひ各楽器に注目してみてください。

主人公はチェロ
森の中の物語をイメージして演奏しています

東京交響楽団チェロ奏者 樋口泰世

ドヴォルザークの交響曲第8番は、色彩感が豊かで、弾き手も聴き手も音楽の中にとても入りやすい曲ですね。シンフォニーとはいえ、オペラのようなストーリー性があり、とても分かりやすい曲だと思います。私はこの交響曲から“物語”を感じるんですよ。私の感じる“物語”は……主人公はごく普通の男の人。あるところから指令を受けて、得体のしれない悪者を倒しに森の中へ行きます。その主人公のテーマが、冒頭のチェロの旋律です。主人公のもとに仲間が集まってきますが、木管楽器がそれを表しています。そしてチェロとヴィオラの堂々とした旋律は、戦うための剣を授けられる場面。そんなふうに第1楽章は主人公のテーマと森の情景を中心に展開していきます。第2楽章はお城の中にお妃様がいるゆったりした情景。ヴァイオリン・ソロは、ソプラノが歌う印象ですね。第3楽章は、民衆が集まる賑やかな場面。ドヴォルザークは自らがオペラのために書いた節をここで使っているそうですよ。第4楽章は戦いに行く場面です。トランペットのファンファーレが戦いの始まりを表現しています。……というのが私が個人的に感じる“物語”です。また、物語だけでなく色のイメージも湧いてきます。この交響曲は濃いブルーですね。みなさんも音楽を聴かれるとき、何か物語性、情景、色のイメージを持ってみてください。そうすると、より楽しく作品を聴けると思いますよ。

聴きどころは、第2楽章のヴァイオリン・ソロ。短いですが、印象的で大好きです。それから第4楽章のオーボエ、クラリネット、ホルンがトリルをしながらベルアップするところ。とてもかっこいいので、その姿を見たくてチェロを弾きながらチラ見しています(笑)。一番好きな部分は、第1楽章と第4楽章冒頭のチェロです。この旋律は、同じ音域でもチェロ以外の楽器の音ではダメなんだろうな、と感じています。チェロ・セクションでまとまって演奏するときの一体感は聴きごたえがあると思いますし、弾いていてもとても気持ちが良いです。

楽譜上はシンプルなのに、ボリューム感があって色彩感が本当に豊か。弦と管がこんなに一体化する交響曲はほかにないんじゃないでしょうか。チェロは、同じ動きをすることの多いトロンボーンやテューバから噴水のように下から持ち上げられ、その勢いにのって演奏している感じです。だから全楽章弾き終わると汗だくになります。また、ホルンとの掛け合いも楽しい曲です。物語の主人公チェロの活躍をぜひ聴いてください。

ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「スパイラル Vol.33」(2012年7月1日号)より転載/取材 榊原律子

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ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第142回

【日時】2018年 11月11日(日)14:00開演
【出演】指揮:原田慶太楼 ヴァイオリン:木嶋真優
【曲目】ジョン・アダムズ:ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88

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