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ワークショップレポート「みずいろのスマイル」ができるまで その①

2021年8月9日、フェスタサマーミューザKAWASAKI 2021のフィナーレコンサートで東京交響楽団による演奏で世界初演を迎える新曲《かわさき組曲》は、今年5月から7月にかけて、川崎市内の特別支援学校3校の生徒27名と18名の教員、そして13名の日英音楽家が、のべ20回の音楽づくりワークショップを行い、オペラ《アイーダ》の音楽をインスピレーションに曲づくりを進めました。《アイーダ》の豊かな音楽に触れ、生徒たちと音楽を通してさまざまな心理や感情を表現することを探求しながら、一緒に音楽を奏でる喜びを感じる時間を過ごしました。生徒たちが生み出すリズムやメロディ、思い思いに奏でる音を集めてできた曲は、生徒の個性や創造性だけでなく、ワークショップの雰囲気も捉えた作品になっています。

かわさき組曲 (2021)
1 ふしぎなポケット
2 えがおになれるばんそう
3 みずいろのスマイル
4 きいろとりどり

作曲者:かわさき=ドレイク・ミュージック アンサンブル プロジェクト参加者
【田島支援学校 桜校】生徒:5名、教員:4名
【田島支援学校 本校-1】生徒:7名、教員:4名
【田島支援学校 本校-2】生徒:6名、教員:4名
【中央支援学校】生徒:9名、教員:6名
【音楽家】池野博子 大松暁子 武田国博 南條由起 浜野与志男 宮野谷義傑 / 東京交響楽団:蟹江慶行 鈴木浩司 多井千洋 中村楓子 新澤義美 久松ちず
【ドレイク・ミュージック】ベン・セラーズ

プロジェクトについて詳しくはこちら

このレポートでは、3曲目となる「みずいろのスマイル」を作った中央支援学校でのワークショップを振り返ります。

ワークショップレポート その1

第1日目(5月25日)

中央支援学校のワークショップ参加者は、同校の「放課後音楽部」のメンバーだ。音楽が好きな高校2,3年生の9名。
生徒たちを出迎えたのはファシリテーターの大松暁子によるヴァイオリン演奏。
生徒たちは緊張の面持ちで部屋に入ってきた。知らない音楽家との出会い。これから何をするのか?という期待と戸惑い、不安。泣き出してしまう生徒もいる。感情が繊細で、豊かなのだ。
ワークショップを担当する2名のファシリテーター、大松暁子(ヴァイオリニスト)と池野博子(声楽家)が自己紹介し、英国のアート団体「ドレイク・ミュージック」のベン・セラーズからのビデオレターが流される。本当は一緒にワークショップに参加予定だったが、来日はかなわなかった。「ロンドンにいるけど、みんなに会いたいよ」というメッセージに、「来ればいいのに!」と答える生徒も。

何しろ、緊張の初対面だ。まずは相手を知って「仲良くなること」から始めるため、この日は生徒一人ひとりの名前を使ったメロディづくりを行った。名前が持つイントネーションや語感などを音として表現し直すアプローチである。
名前を教えて欲しいという問いかけにも反応はさまざまだ。すぐに手を上げ、元気よく名前を教えてくれる子。〇〇ちゃんいきなよ、大丈夫だよ、と、友達に声をかける子。いざ前に出てみたらかたまってしまって、みんなに応援される子。得意なパプリカのダンスを披露してくれる子。

それぞれの“名前のメロディ”に合わせて、楽器の音を重ねたり、リズムにのってカラダを動かしたり、みんなで手拍子をしてみたり。そうやって、ひとつのメロディをベースにどんどん音をふくらませていく。たとえば生徒のひとり「さき」は、先生にサポートされながらマイ・リズム「さっきんちょ、さっきんちょ、さっきん・ちょ X X(手拍子)」を作った。印象的なそのフレーズがくり返し飛び出す。

このワークショップでは事前に用意された楽譜はなく、すべての音はその場で生み出される。生徒たち一人ひとりの個性が音に、そして最終的には曲に反映されていく。

音楽を使って、交流を図るシーンもあった。音楽家が「アイーダ」や「威風堂々」を演奏してみんなで行進したり、生徒たちからはこれまでの音楽部の活動で踊った曲や好きな曲をヒアリングしたり、「〇〇ちゃんこれ得意だよね」といいながら、「USA」や「パプリカ」、NiziUの曲などを踊ってみたり。生徒たちが親しんでいる音楽を知り、音楽家も生徒たちとの世界の接点を模索する。その繰り返しの中で、少しずつコミュニケーションが生まれていく。次回はもう少し仲良くなれるかもしれない。

ワークショップの前後には、生徒たちをどうサポートすればいいのかをオンラインミーティングでロンドンのベン・セラーズと日本の音楽家たちでじっくり話しあう。
ドレイク・ミュージックは障害のある人とのアートプロジェクトの経験が25年以上に及ぶ。経験豊かなベンからの示唆はとても貴重だ。

★ベンからのフィードバック
生徒たちがとても前向きに参加している。楽しい面白いことをしてくれるという期待を感じている様子だ。
生徒たちによって表現の方法はさまざまなので、言葉だけではなく、表情や動き、サポートの先生の様子を観察しながら、音楽家側が一人ひとりにチューニングしていくとよい。共感力が高い、積極的な子たちなので、ストーリーを一緒につくり音楽で表現する方法はどうか。彼らの中から音楽がでてくるきっかけや動機を探ってみよう。

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