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ミューザ川崎シンフォニーホール
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ライブ・レポート 大萩康司&奥村愛「リバーカフェ ランチ&コンサート」

 多摩川の河口近く、対岸には羽田空港が臨めるというエリア「キングスカイフロント」は、テレビの情報番組などでも取り上げられる注目スポットだ。広大な土地にライフサイエンスや環境分野等の研究所などを誘致する一方、2020年度には羽田空港とをつなぐ連絡橋の完成も予定されている。2018年6月、そのエリアにオープンした「The WAREHOUSE」は早くも新しいトレンドスポットとして話題を呼んでおり、ランチ&ディナーを目当てに訪れる人も多い。その一角にある「トレックス・カワサキ・リバーカフェ」は、店内にヴィンテージのポルシェや映画のポスター、ジュークボックスなどがある開放的な雰囲気のカフェ&レストランだ。 

 3月9日(土)の午後、この店内でミューザ川崎シンフォニーホール主催によるランチ付きの出張コンサートが行われ、ヴァイオリニストの奥村愛とギタリストの大萩康司がデュオとして登場した。当日は大萩がMCで「屋内にいるのがもったいないくらいの散歩日和ですね」というくらいの快晴。自然光が店内にも差し込み、2つの楽器の音も心なしか軽快で明るく聞こえるほど。テーブルや椅子、ソファなどが並べられた客席のすぐ近くで演奏が繰り広げられ、気軽な雰囲気の中で音楽との一体感が味わえるという独特の時間となった。 

 プログラムは、奥村愛が「気軽なライヴのつもりだったのに、ミューザのホールで再演したいくらいガッツリな感じになりました」と語るほど、本格的なラインナップ。エルガー作曲の「愛のあいさつ」で和やかに幕を開けたコンサートは、全4楽章あるジュリアーニ作曲の「グランド・ソナタ」、丁々発止のプレイが繰り広げられるバルトーク作曲の「ルーマニア民俗舞曲」、ヴァイオリンが高度な演奏テクニックを披露するヴィターリ作曲の「シャコンヌ」と続く。 

 デザート・タイムを兼ねた休憩をはさみ、後半はリラックスした雰囲気に。有名なイギリス&アイルランド民謡のメロディが次々に登場する加藤昌則作曲の「ケルトスピリッツ」、ギターの奥深い音色と歌心が感動を呼ぶゲーラ作曲の「そのあくる日」、そしてフィナーレは音楽に合わせて踊り出したくなるピアソラ作曲の「タンゴの歴史」。アンコールにはしっとりと、サン=サーンス作曲の「白鳥」を。

 発売してすぐに満員となった60名限定のスペシャル・ライヴは、ファミリーも含むお客様たちの笑顔とあたたかい拍手にあふれ、演奏者の2人もその雰囲気に後押しされたようだ。ホール休館中の出張コンサートだったが、いつもはホールへ来場するお客様の中からも「こんな場所があるとは知らなかった」「またみんなでランチをしに来ましょ
う」といった声があがり、新しい発見の一日になったようである。


取材・文=オヤマダアツシ(音楽ライター)
写真=青柳聡

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